『いきもーる』3周年記念企画! 中の人インタビュー!
2020年4月19日(日)<飼育の日>で、いきものグッズ専門ネットショップ『いきもーる』は3周年を迎えました! ということで、今回は、3周年記念企画として、『いきもーる』中の人インタビューをお届けして…
2020.05.27
投稿日:2020.05.27 更新日:2022.03.10
早くも中の人インタビュー企画第2弾!
みなさんは、『サンシャイン水族館』で『サンゴプロジェクト』という活動が行われているのをご存知ですか?恥ずかしながら、私は、この「いきふぉめ〜しょん」編集部の一員でありながら、今回のインタビュー企画の話が出るまで、『サンゴプロジェクト』の存在すら知りませんでした。
今回は、その『サンゴプロジェクト』のメンバーのお一人、ツルハシさんにインタビュー! もちろん今回も、密はダメ!ということで、Web会議にてインタビューを実施。『サンゴプロジェクト』のことはもちろん、現在サンゴを取り巻く環境や、私たちが日常生活の中でできることについて、丁寧に教えていただきました。この記事が、読者のみなさんの意識や行動を変えるきっかけになれば嬉しいです。それでは早速、『サンシャイン水族館』の中の人インタビュースタート!
目次
—まずは、簡単に自己紹介をお願いします!
ツルハシ:『サンゴプロジェクト』のスタート時から参加しております、ツルハシと申します。よろしくお願いします!
—本日は、よろしくお願いします! 早速ですが、まずは、『サンゴプロジェクト』について教えてください。
ツルハシ:『サンゴプロジェクト』は、サンゴの保全活動のことです。
具体的に何をしているかというと、私たちは、大きく3つの柱で活動をしています。
まず、お客様にサンゴについて知ってもらうために、サンゴを紹介するということ。これは、水槽にサンゴを展示したりとか、お客様に実際に見ていただき紹介しています。
2つ目は、サンゴを実際に守る活動をしています。この活動では、沖縄県恩納村との協力により、サンゴを沖縄からお借りして水槽内で育てたり、殖やしたりしています。これは、主に、サンシャイン水族館の飼育スタッフがやっている活動です。
最後は、伝えるという活動です。これは、サンゴ自体について知ってもらうということだけでなく、今サンゴがどんな環境に置かれているかというところをお客様に伝えて、お客様自身がサンゴのためにできる行動、環境に配慮した行動に繋げる第一歩としての活動になります。
サンゴプロジェクトは、この、「知る」「守る「伝える」の3本柱で活動をしています。
—ありがとうございます! 『サンゴプロジェクト』のWebサイトを拝見したところ、サンゴの守る活動には、「サンゴ返還プロジェクト」と「サンゴ礁再生プロジェクト」の2つがあるとのことなのですが、2つの違いを教えていただけますか?
ツルハシ:このプロジェクトがスタートしたのは、2006年です。当時は、「サンゴ返還プロジェクト」として立ち上がりました。
「サンゴ返還プロジェクト」と「サンゴ礁再生プロジェクト」の大きな違いは、サンゴの殖やし方です。
どのように違うかというと、「サンゴ返還プロジェクト」は、「無性生殖」でサンゴを殖やしています。
具体的には、サンゴの体の一部から、新たな自分のクローンを作るんです。
これは、サンゴならではの殖え方なのですが、サンゴは体を分裂させ、殖えるという特性があります。例えば、サンゴの枝を1本ポキっと折っても、折れた枝が成長し、2つのサンゴとして成長していきます。
ただし、これは全部自分自身のクローンなので、同じ遺伝子のものがたくさん増えていくことになります。
これは、1年中いつでもできる殖やし方です。
2つ目の「サンゴ礁再生プロジェクト」は、「有性生殖」でサンゴを殖やします。
サンゴも卵と精子が受精して新たなサンゴが殖えていきます。
サンゴの場合は、卵と精子が入ったカプセルを一斉に放出して、海の中で他のサンゴの卵や精子と出会うというやり方で受精します。
これは、自然のリズムによるので、1年に1回、サンゴの種類によっては数回しかチャンスがない殖やし方です。
—「無性生殖」で殖えたサンゴは、遺伝子が一緒ということですが、その場合、例えば、同じ場所で育てていて、何かダメージを受けたら、やっぱり、一斉にダメになってしまったりするものなんですか?
ツルハシ:そうですね。可能性は大きくあって、例えばですが、高水温に弱いタイプのものだけが殖えたときに、ある夏の日に水温が高くなってしまった場合には、全部一気にダメになってしまいます。なので本当は、いろんな遺伝子があった方が良いとされています。
—やっぱりそうなんですね。とはいえ、「有性生殖」はチャンスが少ないですから、「無性生殖」も必要ですよね。
そもそも、このサンゴプロジェクトをスタートしたきっかけってなんだったんですか?
ツルハシ:水族館では、なんらかの理由で、ちがう水槽を作り上げようというタイミングがあります。本当のきっかけは、この、水族館の展示変更なんです。
『サンゴプロジェクト』を代表する「サンゴ礁の海」という水槽があるのですが、この水槽を作る前は、水族館でイルカを飼っていました。しかし、イルカは野生からの入手も難しく、そろそろ何か違う方向性にしようって話になりまして。
サンゴ礁って、とっても素晴らしい生態系なんです。なにが素晴らしいかというと、非常にたくさんの生き物たちが暮らしている生態系で、海の生き物の種類のうち、だいたい4分の1くらいがサンゴ礁に暮らしていると言われています。しかし、今、いろいろな環境問題などで、サンゴ礁がどんどん減ってしまっていて、私たちもちょっと考えていかなきゃいけないよねっていう思いや、サンゴ保全のきっかけづくりとして、サンゴっていう生き物自体を知ってもらう思いで、サンゴ礁を再現した水槽を作ることに。これが、『サンゴプロジェクト』を立ち上げるきっかけでした。
—今のお話に出てきた、生き物のすみかとしての役割以外の、サンゴ礁の重要性について教えてください。
ツルハシ:私たちが暮らしている東京にはサンゴ礁がないので、もしかしたらピンとこないかもしれないのですが、沖縄や、インドネシア、フィリピンなど、赤道近くの亜熱帯・熱帯の地域の人々にとっては、サンゴ礁に暮らす魚たちが食事の一つだったりとか、捕まえた魚を売ることを商売の一つにしていたりします。あとは、みんな観光で沖縄に行って、キレイな海の風景を見に行ったり、ダイビングをしたり、シュノーケリングをしたりしますよね? そう言った観光的な資源としても、私たち人間にとってすごく大切な役割を持っています。
さらに、実は、これも人間の活動にプラスになるものなのですが、サンゴってとても複雑な形をしている生き物です。そのため防波効果が生じ、天然の防波堤の役割をしてくれます。そのサンゴたちのおかげで、津波や大波の被害が軽減されています。
例えば、同じような防波堤を人工的に作ろうとすると、物凄く費用がかかります。当たり前のような存在ですが、実はとってもたくさんの恩恵を受けているんです。
—サンゴ礁って、海の中の環境だけでなく、私たちの生活にとっても重要なんですね! 知りませんでした!
サンゴ礁が減っているということですが、具体的な原因は何なのでしょうか?
ツルハシ:いろいろな原因があるのですが、私たちがお話させていただく中では、大きく3つを挙げています。
1つ目は、オニヒトデというヒトデがすごくたくさん増えていること。名前からしていかついヒトデですが、サンゴを食べてしまうヒトデなんです。自然の中で、もともと増えたり減ったりを繰り返していたんですけれども、最近爆発的に増えてしまっていて、サンゴが自然に回復するのが間に合っていません。その原因としてあげられているのが生活排水による水質汚染、オニヒトデを食べてくれるホラガイの乱獲です。
2つ目は、土砂の流出です。沖縄県特有の赤土と呼ばれる、すごく細かな砂が、土地開発などにより、海の中に流れてくるようになってしまいました。その砂がサンゴに降り積もってしまい、窒息死してしまったりとか、海が濁ってしまって光合成ができなくて死んでしまったりします。
3つ目は、地球温暖化の影響です。これが今一番、サンゴが大ダメージを受ける原因となっています。サンゴは、大体水温18度から28度くらいの環境でしか暮らせないと言われていて、30度以上の高水温が続くとダメージを受けてしまい、白化というサンゴが白くなる現象がおきます。
そのあと、回復することもあるんですが、そのまま回復できずに死んでしまうことがあり、今、全世界的にかなりダメージを受けています。
—ちなみに、水温が上がった結果、サンゴたちが生息地を北上させるということは、ありえるのでしょうか? というか、可能なのでしょうか?
ツルハシ:そうですね、もともと、もう少し南の方にいたサンゴが、本州の方にきていたりとか、そういうことがすでに起きているんです。サンゴの北上化についていろんな理論がある中で、可能か不可能かでいうと、不可能だと考えられています。
というのも、夏は暖かくてちょうどいいかもしれないですが、もともと、北に行けば行くほど冬の海は冷たくなってしまいます。なので、その季節の変化に耐えきれずに死んでしまうのではないかと言われています。
—確かにそうですね。夏はちょうどいいけど…。
今までの活動を通じて印象に残っていることや楽しい思い出なんかを一つ教えてください。
ツルハシ:4年越しに産卵に立ち会えたことが、一番印象に残っています。
「サンゴ礁再生プロジェクト」がスタートしたのが、2014年、そこから4年目に初めて産卵をしています。ただこれは、陸上の水槽での出来事で、昨年初めて、海中での産卵をしているサンゴを見ることができました。水槽と何が違ったかというと、サンゴが産卵した瞬間に、すごい魚の群れがやってきて、あっという間にサンゴの卵を食べていったんです。そういう生き物の繋がりだったり、命のつながりっていうのを初めて目の当たりにして。でも、サンゴも増えたい、子孫を残したいので、たくさん卵を産んで。少しでも生き残るといいなって思いました。
—『サンゴプロジェクト』のWebサイトのレポートにも載せてらっしゃいましたよね! 読みました!それでは、『サンゴプロジェクト』の、今後の短期的な目標と長期的な目標を教えてください。
ツルハシ:まず、短期的な目標は、移植したサンゴが無事に育っていって、そのサンゴたちが卵を産んで第二世代を自然界に残すことだったので、現時点で、既に通過しています。
長期的な目標としては、自然界でそのサイクルは維持しつつ、今度は、水族館内での産卵を目指します。これには利点があって、万が一、自然の海の環境が悪くなったとしても、水族館で常に系統を増やし続けることができれば、遺伝バンクになりますし、持続的にサンゴを供給することが可能になります。なので、まずはその技術を確立して、仮に自然界のプロセスが崩れてしまって、産卵がみられなかったとしても、常に供給できる体制を作るということが長期的な目標です。
これは、あくまでも技術的なお話で、こうやってメディアを通じて発信することで、地球に暮らすみんなが考えを改め直すきっかけになって、サンゴ礁が何もしなくても健全な状態でいられるようにすることが、本当の最終目標です。
—サンゴ礁を守るために、実際に、サンゴチームの皆さんが、日常生活の中で気をつけていることはありますか?
ツルハシ:できることから始めましょうということで、できるだけ地球温暖化の原因となる二酸化炭素の発生を抑えるために、電気はこまめに消しましょうとか、無駄な待機電力は切りましょうとかは、自分たちの生活の中でも取り入れています。
あとは、最近当たり前になりつつある、マイバック。エコバックを持ち歩いて、買い物の時に袋はいりませんって言うとか。サンゴチームとしては、それらを率先してやっていこうと思っています。
—(となりにいた編集部メンバーに向かって)ち、な、み、に、エコバック持って歩いてます? (私は持ってます!)
編集部メンバー:持ってません。
一同:笑
ツルハシ:持ってください!
—オガワさん、エコバックって、「いきもーる」で売ってますよね?
オガワ:エコバックとしてご利用いただけそうなものあります!
編集部メンバー:買います!
—ちなみに、そのほか、読者の人にサンゴのためだけじゃなく、生き物たちのために、できたらこういうことをやってくださいっていうのをもっと教えてほしいです!
ツルハシ:先ほど話にあがったことなどを、やれる範囲でやっていただいて、あとは、なんとなくですけど、目標だったりとか、なんのためにっていうのがないと、意外と人って行動できなかったりするので、まずは、ぜひ、綺麗な海に一回遊びに行ってほしいです。
そうすると、海の上にぷかぷかぷか〜と空のペットボトルが浮いていたりとか、砂浜にスーパーのゴミ袋が落ちていたりとか、そう言う光景を目にすることがあると思います。そういうのを認識して、それが生き物に対して悪影響を与えているんだなってことを、まず実感していただくのが一番いいかなって思っています。
—まずは、実態を知る、体感するですね。
編集部メンバー:ちょっと前にYouTubeで見たんですけど、釣りをした時に針とか糸がサンゴ礁に絡まっちゃうみたいな。あれって絡まったらすぐに、サンゴって死んじゃうんですか?
ツルハシ:状況にもよるんですけど、釣り針レベルだったら、壊滅的になることは少ないです。ただ、サンゴにキズができるので、そのキズから病気になっちゃったりとか、その状況で、運悪く環境的な問題も重なってくると、ストレスを受けて大ダメージということもあります。
あと、その引っかかった針がそのまま残ってしまうと思うので、魚が食べてしまったりとか、二次的に繋がってしまうこともあります。
編集部メンバー:やっぱりいいこと全くないですね。ちなみにサンゴって食べれるんですか?
ツルハシ:人間は、食べれないと思いますが、魚だったりとか、オニヒトデみたいに食べる生き物はいます。あと、ガンの特効薬になるみたいな研究もされていますので、その成分が人間にとって良い効果をもたらすことはあるかもしれません。
—ガンの特効薬ができたらすごいですね! でも、そうなったら、ますます保全活動に力を入れなければなりませんね!話は変わりますが、「サンゴ礁の海」の水槽で、ここを見て欲しいとか、ここ注目ポイントですっていうところを教えてください。
ツルハシ:王道とマニアックをお伝えしたいと思います。
王道は、魚たちの動きに注目して欲しいです。あとは、チンアナゴが一緒に展示されていますので、チンアナゴだけを観察してても非常に面白いと思います。お客様によく、チンアナゴがいませんと言われるのですが、チンアナゴは、底面あたりに暮らしている生き物なので、水槽の下の方を覗いてみてもらうと出会えます。
マニアックなのは、岩の中の生き物を探してみて欲しいのと、サンゴを、すごく近づいて、マクロで見てほしいなというところです。「サンゴ礁の海」の水槽には、本当にたくさんの生き物を入れているので、一匹しかいいない生き物だったりとか、たまーにしか出てこない生き物が、岩の中からヒョロヒョロって出てきたりします。なので、王道な目立つお魚ばかりを目で追うだけでなく、隅々まで観察してると、何この生き物!見たいな発見がいろいろあるので、ぜひ、マニアックな視点としては見て欲しいです。
それから、サンゴって、ただの枝っぽいイメージがあるかもしれないですけど、すごく色も綺麗で、マクロでよく見ると、サンゴから触手が出ていたりとか、生きてる〜って感じで動いてたりします。生き物が近づくと触手をシュッって引っ込めたりする動きもあったりとか、体に水を吸い込んでぶーんと膨らんでたりする時もあるので、時間をかけてずーっと観察してても面白いですよ。
—前回のインタビューで、オガワさんに、中の人流『サンシャイン水族館』の楽しみ方聞いたのですが、それもまだ試せていないので、営業が再開したら、それと合わせて、「サンゴ礁の海」の水槽を徹底的に観察したいと思います!
最後に、読者の方へメッセージをお願いします。
ツルハシ:なかなかサンゴってとっつきにくい生き物かなとも思いますが、実は、とても奥が深かったりとか、いろんな背景があって面白い生き物です。まずは、キレイだなとか、そういう軽い気持ちでいいので、サンゴを見てほしいなって思っています。そして興味を持っていただけた方は、今度は、行動だったりとか、勉強していただいたりとか、もっと私たちの話を聞いていただくとか、その次のステップに進んでいただければ、私たちもうれしいです。
—ありがとうございました! 私も、小さな行動からコツコツやっていこうと思います。そして、これからも、みなさんの活動を応援していきます!
現在、新型コロナウイルス感染症の影響で、リアルイベントが開催できていないことから、デジタルコンテンツの配信の企画もあるそうです。もし、この記事をきっかけに、サンゴに興味を持っていただけましたら、ぜひ、『サンゴプロジェクト』のWebサイトも定期的にチェックしてみてください!
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